東京簡易裁判所 平成11年(ハ)16840号 判決 2000年2月29日
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
一 請求の趣旨
原告と被告との間の東京簡易裁判所昭和58年(ハ)第6082号貸金請求事件について、同裁判所が昭和59年2月8日に言渡した判決に基づく、原告の被告に対する金16万円及びこれに対する昭和54年7月2日から支払済みまで年3割6分の割合による金員の請求債権が存在することを確認する。
二 原告の主張
1 請求原因 別紙請求の原因記載のとおり。
2 消滅時効及び債務免除の主張は争う。
三 被告の主張
1 被告は、平成3年7月24日、本件債務名義に基づく強制執行により8万4,159円を弁済した(争いがない。)。右弁済の後5年を経過したので、商法第522条に定める消滅時効が完成した。右消滅時効を援用する。
2 右強制執行の際、原告の代理人新井隆雄は、被告に対し、本件債務名義によるその余の債務を免除する旨の意思表示をした。
3 平成11年1月5日、被告名義で1万円が弁済されているが、右弁済は、被告の内妻が原告から深夜催告を受けて送金したものであり、内妻は、時効の完成を知らずに被告に代わって弁済したものである。従って、被告が時効の利益を放棄したものではない。
四 理由
1 争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によると、原告の被告に対する本件債務名義に基づく請求債権は、原告の商行為による債権であること、被告は、平成3年7月24日、本件債務名義に基づく強制執行により、8万4,159円を弁済したことが認められるところ、その後5年を経た平成8年7月23日の経過により商法第522条に定める消滅時効が完成したことは明らかである。
2 証拠及び弁論の全趣旨によると、平成11年1月5日、被告名義により、原告の預金口座に1万円が振込送金されていること、右送金は、被告の内妻が原告の請求を受け、被告に代わって送金したものであることが認められるところ、右弁済は、被告の依頼によるものではなく、また、被告の内妻は消滅時効の完成を知らずに弁済したものと推認される。
そうすると、右弁済により被告が消滅時効完成後時効の利益を放棄したものとは認められないから、被告の抗弁は理由がある。
五 結論
よって、原告の請求は理由がない。
(別紙)請求の原因
1 原告と被告間には、東京簡易裁判所昭和58年(ハ)第6082号昭和59年2月8日判決言渡貸金請求事件に基づく確定された判決正本「甲一」、送達証明書「甲二」が存在し、控訴や再審の申立もなく、かつ弁済による完済や債務免除による失効、並に破産免責等もない上、現実に原告が右各正本を所持している。
2 原告は右確定された正本の主文記載の債権に対して、被告が平成3年11月26日(甲三)、(甲一)の後記記載の弁済があったので、昭和53年1月13日より昭和54年7月1日迄の年3割6分の割合による損害金84,159円に充当して催告した。
3 ところが、甲4の通り「時効が完成したので援用する」旨主張され残金は一切なくなったと主張する。
4 よって、請求の趣旨記載の旨の判決を求める。